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歌詞かし翻訳ほん 別館

訳詞の名訳を集めました

かしほん別館では、古今東西、クラシックからロックやポップス・童謡まで、翻訳者目線で見て「こんな訳はオレには絶対思い浮かばないよ…」と、脱帽して嫉妬してしまうほど秀逸な訳詞(歌詞の翻訳)を紹介します。

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『イパネマの娘』

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『きよしこの夜』
 訳詞: 由木康

清しこの夜 星は光り
救いの御子は 御母の胸に
眠り給う 夢安く
【原詞】
Stille Nacht! Heilige Nacht!
Alles schläft; einsam wacht
Nur das traute hochheilige Paar.
Holder Knab’ im lockigten Haar,
Schlafe in himmlischer Ruh!
Schlafe in himmlischer Ruh!

この曲の原詞と訳詞の全文を読みたい方は・・・
→ Wikipedia「きよしこの夜」

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原詞で聴く
Stille Nacht, heilige Nacht
original
訳詞で聴く
「きよしこの夜」 玉置浩二さん
original

【コメント】
おなじみの「きよしこの夜」
原曲はドイツ語です。
1818年12月25日にオーストリアの
オーベルンドルフ(Oberndorf)の
教会で演奏されたのが始まりです。
(曲)Franz Xaver Gruber
(詞)Joseph Mohr

原曲の歌詞を直訳すると・・・

静かな夜! 聖なる夜!
みんな眠っている;起きているのは
親愛なる神聖な お二人のみ
巻き毛の愛らしい男の子
天の安らぎのなかで眠れ!
天の安らぎのなかで眠れ!

由木康さんの訳詞は、もう文句なく
ただただ美しい日本語です!

まず、出だしの still(静かな)を
「清し」と訳したのが美しい。
「静」と「清」はイメージが近いですね。

次の「星は光り」という言葉は
原文にはないのですが、
Nacht(夜)という言葉からの連想

キリスト=「救いの御子」という表現も、
「救い」と「御子」という2つの名詞を
助詞「の」でつなぐだけで、
こんなに簡潔で綺麗な言葉が生まれる!
ホレボレする訳語です。

最後は、
尊敬語を使った「眠り給う」。
そして、倒置法で「夢安く」で
余韻を残して終わる。

なお、別バージョンの日本語訳もあり、

清しこの夜 星は光り
救いの御子は 馬糟(まぶね)の中に
眠り給う いと安く

こちらの訳では、
キリストが飼い葉桶に寝かされた
という聖書の言葉をもとに、
「馬糟(まぶね)の中」と訳しています。
聞き慣れない日本語ですが良い響きですね。

皆さまも、聖なる夜に
美しい日本語を味わってください♪

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『雪のおどり』
 訳詞: 油井圭三

こんこん こんこん ふれふれ 雪
ずんずん ずんずん 積もれよ 雪
【原詞】
Týnom, tánom, na kopečku stála,
týnom, tánom, na mňa pozerala,
týnom, tánom, nepozeraj na mňa,
týnom, tánom, něpojdeš ty za mňa

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原詞で聴く
Týnom tánom
original
訳詞で聴く
雪のおどり
original

【コメント】
原曲は、スロバキア民謡です。
スロバキア語の原詞を直訳すると、

彼女は丘の上に立っていた
彼女は僕を見ていた
僕を見るな
君は僕と結婚する気がない

おわかりのように、
日本語訳の「雪のおどり」とは
まったくちがう歌詞なんです。

そのため、歌詞の翻訳という面では
見るべきところは特にありません。

ただし!
この曲の美しさは、なんといっても

Týnom, tánom
ティーノン、ターノン
という繰り返される音の響きですよね。
上の動画でぜひ聴いてみてください。

油井圭三さんは、この響きから
「しんしんと降る雪」
を思い浮かべたのでしょう。

こんこん こんこん
ずんずん ずんずん

擬音語が曲にハマりすぎていて
もとから「雪」の曲だったのでは
と錯覚してしまいますね。

同じメロディーでも、歌詞を変えたら
一味違った曲になることはあり得ます。

『雪のおどり』は、その典型例で、
訳詞が生み出した美しい新曲
と言えるのではないでしょうか。

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『サンタが街にやってくる』
 訳詞: タカオカンベ

サンタクロース イズ カミン トゥ タウン
【原詞】
You better watch out
You better not cry
You better not pout
I'm telling you why
Santa Claus is coming to town

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原詞で聴く
Santa Claus Is Comin' to Town - Mariah Carey
original
訳詞で聴く
サンタが街にやってくる
original

【コメント】2019/12/04
みなさん、こんにちは。
クリスマスに浮かれるアラフォー男です。
というわけで、今回もクリスマスソングです。

『Santa Claus Is Comin' to Town』

説明不要の定番ソングですね。

まずは上掲の原詞を直訳してみると、

気を付けていたほうがいいよ
泣かないほうがいいよ
すねていないほうがいいよ
なぜかって言うと
サンタクロースが街にくるから

「いい子にしてないとサンタが来ないよ!」
という歌です。

僕の知り合いのご家庭では、
良い子のところにはサンタが来るけど
悪い子にはヨンタゴタが来るんだそうです。
サンタが一番お金持ちなのだとか。

さて、この曲の日本語バージョンは、
タカオカンベさんの訳詞でおなじみです。

あなたからメリークリスマス
わたしからメリークリスマス
サンタクロース イズ カミン トゥ タウン

原詞とは大きく異なる超訳ですが、
「あなたから」「わたしから」という訳詞は
簡潔で、それでいてみんなを幸せにする
魔法のような言葉ですね!

この訳詞から僕が連想したのは・・・

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。
三好達治さんの「雪」という詩です。

タカオカンベさんの訳詞に話を戻して、
僕が驚愕したのは、

サンタクロース イズ カミン トゥ タウン
という訳(というか、英語そのまま)。

普通の翻訳家なら、
「ここが腕のみせどころ!」
と鼻息が荒くなるところ。

サンタクロース,街/町,
ぼくらの町に/ぼくらのもとに
トナカイに乗って,遠い国から,
おもちゃ,おひげ,赤い帽子
などの言葉を駆使して、
名フレーズを探るのが醍醐味でしょう。

ところが、タカオカンベさんは、
なんと英語をそのまま残しました。
でも、おそらくですが、

・だれでもわかる平易な英語である
・日本人にも発音しやすい句である
・コマーシャル的なノリの良さ
といったことを含め、すべて計算済みのハズ。
そうじゃないと、「英語のまま」というのは
かなりの勇気がいる決断です。

実際、
サンタクロース イズ カミン トゥ タウン
とカタカナで書いてあるだけで、
みなさんも曲が思い浮かびませんか?
文字を見ただけで歌を口ずさむことができる!
ヘタに訳すよりも何万倍も素晴らしい訳詞です♪

p.s.
ドイツの子供たちのもとへは
サンタクロースではなくニコラウスが来ます。
ひと足早く、12月6日に来ますよ~☆

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