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投稿: 2019/12/06

while の意味と訳しかた

前から訳す?後ろから?


今回は、接続詞 while の意味と訳しかたです。「時間」「比較」「逆接」の意味があります。前から訳す?後ろから訳す?

[目次]
接続詞 while の意味
 1. 時間
 2. 比較
 3. 逆接
おまけ: 細かすぎる翻訳の話

接続詞 while の意味

接続詞 while は、いろいろな訳しかたが考えられる英単語で、翻訳者としてはワクワクしますね! 接続詞 while の意味をざっくり分類すると、以下の3つになります。

1. 時間 ... 2つの事柄が同時に生じている
2. 対比 ... 2つの事柄を比較する
3. 逆接 ... 前に述べたことと相反する事柄を述べる

1. 時間

時間の「同時性」を表す while の訳語としては以下のものが考えられます。

~と同時に,~の間,~中,~と共に,~した状態で,
~しながら,~しつつ

どの訳語が適切かは、英語の構文や字面からだけでは判断できません。原文の内容をよく理解して、文脈に応じて訳語を選ぶ必要があります。翻訳者の腕のみせどころですっ! 以下にいくつか例を挙げます。

米国特許第9,964,090号
A controller of a start-stop vehicle can turn the engine off while the vehicle is stopped.

アイドリングストップ車両の制御装置は、車両が停止されると同時にエンジンをオフに切り替えることができる。
米国特許第4,953,720号
The driving body can be moved while the fixing means is fixed to the construction.

固定手段が構造に固定されている状態で、駆動体を移動させることができる。

この例文は、以下で述べる「2. 対比」と解釈することも可能です。対比と解釈した場合の訳は、「駆動体を移動させることができ、一方、固定手段は構造に固定されている。」となります。

米国特許第5643169号
Baffle plate 48 can be adjusted while the machine is running.

機械が稼働している、バッフルプレート48を調整することができる。
機械の稼働、バッフルプレート48を調整することができる。

2つ目の訳では、while節のなかを名詞化して訳しています。「が稼働している」→「の稼働」。このように名詞化できる場合には、「~中」という訳語が使えます。

米国特許第3073847号
5.65 g of sodium is addedwhile stirring continuously.

連続的に撹拌しながら、5.65gのナトリウムを添加する。
連続的に撹拌しつつ、・・・

細かすぎる翻訳の話

さてこれから、細かすぎる翻訳の話をします。前から訳すか、後ろから訳すかという話です。読み飛ばしていただいてもかまいません。お急ぎの方は、2. 対比 にお進みください。

主文 while ...
While ..., 主文

while の構文は、文中に while が来るときも、文頭に while が来るときもあります。いずれにせよ、ある主文があって、その追加や補足の説明として、while ... が存在します。while 以降の部分は、主文に対して副文とも呼ばれます。

翻訳時には、上記のいくつかの訳例を見ておわかりのように、「副文(while節)を最初に訳し、それから主文を訳す」というのが基本スタイルになります。ただし、応用編で、主文から訳すことも可能です。

たとえば、上記の最後の例文をもういちど見てみると

5.65 g of sodium is added while stirring continuously.

連続的に撹拌しながら、5.65gのナトリウムを添加する。

この訳例では、基本どおり副文(while節)を最初に訳しています。でも・・・、主文の「添加する」と副文の「撹拌する」が同時に行われているのですよね? ということは

連続的に撹拌しながら、5.65gのナトリウムを添加する。
 ↓
5.65gのナトリウムを添加しながら、連続的に撹拌する。

順序を逆さにして訳してもいいんじゃない? だって、どっちにしろ同時に行われているのだから。

このように、while の構文は、前から訳すことも可能です。ただし、主文から訳す場合には注意点があります。それは、訳したときに、主文と副文の「主/副の関係」が逆になってしまわないようにするということです。

上の例では、主文が「添加する」、副文が「撹拌する」です。これを主文から訳すと、

5.65gのナトリウムを添加しながら、連続的に撹拌する。
となりますが、この日本語をよくよく読むと、「添加する」よりも「撹拌する」のほうが「主」になってしまっているように感じませんか? 感じてください、微妙なニュアンスの違いを! これは、
英語では、大事なこと(主文)を最初に言う
日本語では、大事なこと(主文)を最後に言う
という、英語と日本語の性格の違いによるものです。そこで、主/副が逆転してしまう問題を解消するには、たとえば、以下のように主文をいったん読点で区切ってワンクッションおくという手が考えられます。

5.65gのナトリウムを添加し、それと同時に連続的に撹拌する。

これなら、話のメインが「添加する」で、付随説明として「撹拌する」というふうに読めるのではないでしょうか?

2. 対比

while が対比で使われている場合には、前から訳せばうまくいきます。「~に対し」「~の一方で」「一方」といった訳語になります。

米国特許第7655043号
The first wall portion is movable while the second wall portion remains substantially stationary.

第1の壁部は可動であるのに対し、第2の壁部は実質的に静止したままである。
第1の壁部は可動である一方で、第2の壁部は実質的に静止したままである。
第1の壁部は可動であり、一方、第2の壁部は実質的に静止したままである。
第1の壁部は可動であり、第2の壁部は実質的に静止したままである。

最後の訳例では、while を訳出していません。それでも日本語として十分に「対比」の意味合いが出ています。これは、助詞「は」の働きです。助詞「は」は、単に主語を表すだけではありません。「○○は~、××は~。」という形で並べて使うことで、対比のニュアンスを出すことができます。助詞「が」にはない働きです。

第1の壁部可動であり、第2の壁部実質的に静止したままである。
第1の壁部可動であり、第2の壁部実質的に静止したままである。

日本語の微妙なニュアンスの違いを感じとりましょう!
084.「は」の話 も合わせてお読みください。

3. 逆接

前に述べたことと相反する事柄を述べるときに while が使われます。特許文献では、以下のような定型文で皆さんもよくみかけるのでは。although と同義です。

米国特許第3914769号
While the invention has been described with reference to a particular method, it will be apparent to those skilled in the art that various changes and modifications can be made to the invention without departing from the spirit and scope of the invention as set forth in the claims.

特定の方法を参照して本発明を述べてきたが、特許請求の範囲に記載する本発明の精神および範囲から逸脱することなく本発明に様々な変更および修正を施すことができることは当業者に明らかであろう。


最後までお読みいただきありがとうございました!
ダンケシェーン!!

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