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歌詞かし翻訳ほん 別館

訳詞の名訳を集めました

かしほん別館では、古今東西、クラシックからロックやポップス・童謡まで、翻訳者目線で見て「こんな訳はオレには絶対思い浮かばないよ…」と、脱帽して嫉妬してしまうほど秀逸な訳詞(歌詞の翻訳)を紹介します。

【ネイティブに教わる!シリーズ】 ←新コーナー!!
『イパネマの娘』

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『月ようびはなにたべる?』
 訳詞: もりひさし

きょうは げつようび
げつようびに なにたべる
げつようびは さやいんげん
おなかの すいたこ みんな おいで
【原詞】
Today is Monday, today is Monday.
Monday string beans.
All you hungry children come and eat it up.

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Today is Monday
original
訳詞で聴く
月ようびになにたべる
japanese

【コメント】
アメリカ民謡『Today is Monday』を訳した
もりひさしさんは、児童文学作家。
「こぐまちゃん」シリーズで有名ですね。
翻訳家としては、
『はらぺこあおむし』のエリック・カールさん
の作品を多く訳されています。

英語の原詞の冒頭は、

Today is Monday, today is Monday.
同じリズム、同じ言葉が繰り返されています。

これを、もりひさしさんは、

Today is Monday きょうは げつようび
today is Monday げつようびに なにたべる
と訳しています。
1回目と2回目の繰り返しにそれぞれ
別の訳をあてています。

上のひらがなを見ておわかりのとおり、
1回目は、
きょ・う・は・げ・つ・よ・う・び の8音。
きょー・は・げ・つ・よー・び なら6音と
考えることもできます。
それに対し、2回目は、
げ・つ・よ・う・び・に・な・に・た・べ・る
11音もあります。

字面を見るかぎり、
2回目はどうみても字余りですね。
おそらく、歌うことを主眼として
翻訳したわけではないのでしょう。

歌の翻訳(=訳詞)として読むと、
パッと見では、

歌いにくそう。。
という印象です。
実際、日本語で歌った動画を聴いて
いただくとわかりますが、案の定、
最後の「なにたべる」の部分が
めちゃめちゃ急ぎ足!

ところが、なんとも不思議なことに、
繰り返し聴いているうちに
「なにたべる」
のパタパタとしたリズムに耳が慣れてきて
心地良くすら感じられる!

翻訳を字面だけで判断せずに
実際に声に出してみると、
言葉が違った表情を見せる
という好例だと思います♪

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『5つのメロンパン』
 訳詞: 中川ひろたか

パンやに いつつの メロンパン
【原詞】
Five currant buns in a baker's shop.

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原詞で聴く
Five Currant Buns
original
訳詞で聴く
『5つのメロンパン』手遊び歌
japanese

【コメント】
子供の手遊び歌です。
とてもかわいらしい曲ですので、
ぜひ上の動画をご覧ください。

さて、この曲の訳詞ですが、
名訳といいますか迷訳といいますか。。
私は、ものすごく好きです♪

以下に名訳たる所以(ゆえん)を述べます!

原曲はイギリス民謡『currant buns』。
このタイトルの意味は

ぶどうパン
currant = スグリの実,干しブドウ
bun = 小さな丸いパン
中川ひろたかさんはこれを
メロンパン
と訳しました。
パンの種類を変えていますね。
歌の歌詞を翻訳する際、
このくらいの意訳をするのは
いたって普通のことです。

しか~しっ!
この曲に限っては、私は
たんなる意訳以上のインパクトを受け、
初めて訳詞を聴いたときに
おもわずニヤッとしてしまいました。

どこが笑いのツボだったかというと、

イギリスにはメロンパンはないのです!
ちなみに私の住んでいるドイツにも
メロンパンは存在しません。
ヨーロッパではほとんど見かけません。
他の国や地域はどうなんでしょうか?
ご存じの方、情報をお願いします!

海外在住の多くの日本人にとっては、
メロンパンは、日本に帰国したとき
にしか食べられないぜいたく品♪
私にとっては、
メロンパン=ジャパン
なのだ!!

とにかく、今回の訳詞は
「メロンパン」という言葉だけで
圧倒的な日本語バージョン感が出てます!

中川ひろたかさん自身は、
それを狙って翻訳したわけでは
ないようですけれど、
日本に住む日本人だからこそ生み出せた
日本語訳詞の名訳と言えます!

このように、
訳詞を読んだり聴いたりする人の
各々の生活環境や人生の背景などによって
言葉の感じ方が異なるということも
知っておくべきでしょうね。

以下は、Wikipedia「中川ひろたか」の項から引用。
--
後日、中川がイギリス人の英会話教師に「Five Currant Buns」の訳詞として「5つのメロンパン」を聴かせたところ「イギリスにはメロンパンはない」と言われたという。

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『人の気も知らないで』
 訳詞: 奥山靉(おくやま あい)

人の気も知らないで
【原詞】
Tu ne sais pas aimer

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Tu ne sais pas aimer - Damia
original
訳詞で聴く
人の気も知らないで - 淡谷のり子 (1938)
japanese

【コメント】
突然ですが、想像してください。
アナタは好きな男に邪険にフラれました。
相手の男に最後に一言だけ
捨て台詞を残すとしたら、
アナタはなんて言いますか?

今回ご紹介する曲のタイトルは、

Tu ne sais pas aimer
あなたは愛する術(すべ)を知らない

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
パリの街角。小雨の降る春の夜に、
「あなたは人の愛し方を知らないのよ!」
と捨て台詞を残し、傘もささずに
立ち去っていくパリジェンヌ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※僕の勝手な妄想です。

奥山靉さんの日本語訳は、

人の気も知らないで

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
晩春の夕暮れどき。都内某所。
閉店間近のさびれた喫茶店での別れ話。
対面に座っている和風美人の彼女が、
冷めきったコーヒーの水面から
ふと目を上げて、窓の外を眺めながら
「人の気も知らないで・・・」
とボソッとつぶやく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※僕の勝手な妄想です。

「あなたは愛し方を知らないのよ!」と
強くハッキリ言って別れるのがフランス風。
「人の気も知らないで・・・」と、ボソッと
つぶやくように言って別れるのが日本風。

・・・なんて単純には言い切れませんね。
恋の数だけ別れの捨て台詞もある
と言えましょうか。

ところで、言われる側の男にとっては
どちらの言葉がキツいだろう?
僕はボソッと言われるほうがツラいかな。
ま、自分が振ったのだから、何を言われても
黙って飲み込むしかないですけどね。。

原詞の中には、以下のような
素敵な別れの言葉も出てきます。

Bientôt finit le printemps.
Avec lui, va-t'en donc, va-t'en!
もうすぐ春が終わるわ。
春と一緒に去ってちょうだい!

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『ヴァケーション』
 訳詞: 漣健児(さざなみ けんじ)

V-A-C-A-T-I-O-N 楽しいな!
【原詞】
V-A-C-A-T-I-O-N in the summer sun

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原詞で聴く
Vacation - Connie Francis
original
訳詞で聴く
ヴァケーション - 弘田三枝子
japanese

【コメント】
コニー・フランシスの『Vacation』
皆さん一度は耳にしたことがあるでしょう。

原曲では、
海で遊んで、映画館に行って、恋をして・・・
という若者の夏休みを歌っています。

in the summer sun(夏の太陽の中で)
under summer stars(夏の星空の下で)
an August moon(8月の月)
などの言葉が出てきます。

ところが!
漣健児さんの訳詞では、

「待ちどおしいのは 夏休み!」
「待ちどおしいのは 秋休み!」
「待ちどおしいのは 冬休み!」
「待ちどおしいのは 春休み!」

夏休みだけじゃなくて、
他の休みも全部テンコモリ~ッ!
これなら一年中

VACATION 楽しいな!
ですね。

漣健児さんについては、
下記の記事に詳しい解説があります。

60年代にポップスの黄金時代を築いた天才訳詞家「漣健児」

漣健児さんの歌詞は、
原詞の言葉に沿うのではなく、
原詞のイメージをもとに
新たな日本語に作り変えています。
翻訳というよりは超訳と言えます。

私のような翻訳者の立場からは、
このような訳詞を作るのは難しい。。
翻訳とは別の才能やセンスが必要ですね。

漣健児さんの訳詞は、どの曲を聴いても
原曲を超えるほど楽しい歌になっており、
まさに天才訳詞家だなぁ。

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『マイウェイ』
 訳詞: 中島潤

今 船出が近づく この時に
ふとたたずみ 私は振りかえる
【原詞】
And now the end is near
And so I face the final curtain

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原詞で聴く
My way - Frank Sinatra
original
訳詞で聴く
マイ・ウェイ - 布施明
japanese

【コメント】
フランク・シナトラの『My Way』。
この曲も世界中でカバーされており、
たくさんの訳詞があります。

例えば、
この曲のサビに当たる部分の

 I did it my way
という歌詞。
中島潤さんの訳では、
「すべて心の 決めたままに」
岩谷時子さんの訳では、
「いつも 私のやりかたで」
となっています。

この一節の訳を考えるだけでも
素敵な日本語が数多く生まれる
ことでしょうね♪

今回、『My Way』の数々の名訳の中から
中島潤さんの訳詞を取り上げたのは
歌詞の冒頭の訳がとても美しいからです。

この曲は、
死を間近に迎えた人が人生を振り返る
というストーリー設定です。
原詞の冒頭部を直訳すると、

今、最期が近づき
私は、最後の幕の前に立っている

中島潤さんの訳では、
「最期」や「死」といった直接的な言葉
ではなく、「船出」という優しい言葉を
使っています。

また、人生の幕が下りようとするシーンを

「ふとたたずみ」
と表しているのが、切なくも美しい名訳。

中島潤さんの『My Way』は、
幸せに生きてきた人生の温もり
を感じられる柔和な訳詞です!

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文責: 福原真吾
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