かしほん別館では、古今東西、クラシックからロックやポップス・童謡まで、翻訳者目線で見て「こんな訳はオレには絶対思い浮かばないよ…」と、脱帽して嫉妬してしまうほど秀逸な訳詞(歌詞の翻訳)を紹介します。
【ネイティブに教わる!シリーズ】 ←新コーナー!!
☆『イパネマの娘』
この曲の原詞と訳詞の全文を読みたい方は・・・
→ 原詞の全文 訳詞の全文
曲を聴いてみたい方は・・・
→ 下記の画像をクリックで再生
【コメント】
アメリカ民謡『Today is Monday』を訳した
もりひさしさんは、児童文学作家。
「こぐまちゃん」シリーズで有名ですね。
翻訳家としては、
『はらぺこあおむし』のエリック・カールさん
の作品を多く訳されています。
英語の原詞の冒頭は、
これを、もりひさしさんは、
上のひらがなを見ておわかりのとおり、
1回目は、
きょ・う・は・げ・つ・よ・う・び の8音。
きょー・は・げ・つ・よー・び なら6音と
考えることもできます。
それに対し、2回目は、
げ・つ・よ・う・び・に・な・に・た・べ・る
11音もあります。
字面を見るかぎり、
2回目はどうみても字余りですね。
おそらく、歌うことを主眼として
翻訳したわけではないのでしょう。
歌の翻訳(=訳詞)として読むと、
パッと見では、
ところが、なんとも不思議なことに、
繰り返し聴いているうちに
「なにたべる」
のパタパタとしたリズムに耳が慣れてきて
心地良くすら感じられる!
翻訳を字面だけで判断せずに
実際に声に出してみると、
言葉が違った表情を見せる
という好例だと思います♪
この曲の原詞と訳詞の全文を読みたい方は・・・
→ 原詞の全文 訳詞の全文
曲を聴いてみたい方は・・・
→ 下記の画像をクリックで再生
【コメント】
子供の手遊び歌です。
とてもかわいらしい曲ですので、
ぜひ上の動画をご覧ください。
さて、この曲の訳詞ですが、
名訳といいますか迷訳といいますか。。
私は、ものすごく好きです♪
以下に名訳たる所以(ゆえん)を述べます!
原曲はイギリス民謡『currant buns』。
このタイトルの意味は
しか~しっ!
この曲に限っては、私は
たんなる意訳以上のインパクトを受け、
初めて訳詞を聴いたときに
おもわずニヤッとしてしまいました。
どこが笑いのツボだったかというと、
海外在住の多くの日本人にとっては、
メロンパンは、日本に帰国したとき
にしか食べられないぜいたく品♪
私にとっては、
メロンパン=ジャパン
なのだ!!
とにかく、今回の訳詞は
「メロンパン」という言葉だけで
圧倒的な日本語バージョン感が出てます!
中川ひろたかさん自身は、
それを狙って翻訳したわけでは
ないようですけれど、
日本に住む日本人だからこそ生み出せた
日本語訳詞の名訳と言えます!
このように、
訳詞を読んだり聴いたりする人の
各々の生活環境や人生の背景などによって
言葉の感じ方が異なるということも
知っておくべきでしょうね。
以下は、Wikipedia「中川ひろたか」の項から引用。
--
後日、中川がイギリス人の英会話教師に「Five Currant Buns」の訳詞として「5つのメロンパン」を聴かせたところ「イギリスにはメロンパンはない」と言われたという。
この曲の原詞と訳詞の全文を読みたい方は・・・
→ 原詞の全文 訳詞の全文
曲を聴いてみたい方は・・・
→ 下記の画像をクリックで再生
【コメント】
突然ですが、想像してください。
アナタは好きな男に邪険にフラれました。
相手の男に最後に一言だけ
捨て台詞を残すとしたら、
アナタはなんて言いますか?
今回ご紹介する曲のタイトルは、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
パリの街角。小雨の降る春の夜に、
「あなたは人の愛し方を知らないのよ!」
と捨て台詞を残し、傘もささずに
立ち去っていくパリジェンヌ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※僕の勝手な妄想です。
奥山靉さんの日本語訳は、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
晩春の夕暮れどき。都内某所。
閉店間近のさびれた喫茶店での別れ話。
対面に座っている和風美人の彼女が、
冷めきったコーヒーの水面から
ふと目を上げて、窓の外を眺めながら
「人の気も知らないで・・・」
とボソッとつぶやく。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
※僕の勝手な妄想です。
「あなたは愛し方を知らないのよ!」と
強くハッキリ言って別れるのがフランス風。
「人の気も知らないで・・・」と、ボソッと
つぶやくように言って別れるのが日本風。
・・・なんて単純には言い切れませんね。
恋の数だけ別れの捨て台詞もある
と言えましょうか。
ところで、言われる側の男にとっては
どちらの言葉がキツいだろう?
僕はボソッと言われるほうがツラいかな。
ま、自分が振ったのだから、何を言われても
黙って飲み込むしかないですけどね。。
原詞の中には、以下のような
素敵な別れの言葉も出てきます。
この曲の原詞と訳詞の全文を読みたい方は・・・
→ 原詞の全文 訳詞の全文
曲を聴いてみたい方は・・・
→ 下記の画像をクリックで再生
【コメント】
コニー・フランシスの『Vacation』
皆さん一度は耳にしたことがあるでしょう。
原曲では、
海で遊んで、映画館に行って、恋をして・・・
という若者の夏休みを歌っています。
ところが!
漣健児さんの訳詞では、
「待ちどおしいのは 夏休み!」
「待ちどおしいのは 秋休み!」
「待ちどおしいのは 冬休み!」
「待ちどおしいのは 春休み!」
夏休みだけじゃなくて、
他の休みも全部テンコモリ~ッ!
これなら一年中
漣健児さんについては、
下記の記事に詳しい解説があります。
漣健児さんの歌詞は、
原詞の言葉に沿うのではなく、
原詞のイメージをもとに
新たな日本語に作り変えています。
翻訳というよりは超訳と言えます。
私のような翻訳者の立場からは、
このような訳詞を作るのは難しい。。
翻訳とは別の才能やセンスが必要ですね。
漣健児さんの訳詞は、どの曲を聴いても
原曲を超えるほど楽しい歌になっており、
まさに天才訳詞家だなぁ。
この曲の原詞と訳詞の全文を読みたい方は・・・
→ 原詞の全文 訳詞の全文
曲を聴いてみたい方は・・・
→ 下記の画像をクリックで再生
【コメント】
フランク・シナトラの『My Way』。
この曲も世界中でカバーされており、
たくさんの訳詞があります。
例えば、
この曲のサビに当たる部分の
この一節の訳を考えるだけでも
素敵な日本語が数多く生まれる
ことでしょうね♪
今回、『My Way』の数々の名訳の中から
中島潤さんの訳詞を取り上げたのは
歌詞の冒頭の訳がとても美しいからです。
この曲は、
死を間近に迎えた人が人生を振り返る
というストーリー設定です。
原詞の冒頭部を直訳すると、
中島潤さんの訳では、
「最期」や「死」といった直接的な言葉
ではなく、「船出」という優しい言葉を
使っています。
また、人生の幕が下りようとするシーンを
中島潤さんの『My Way』は、
幸せに生きてきた人生の温もり
を感じられる柔和な訳詞です!
文責: 福原真吾
お問合せ&プロフィール