かしほん別館では、古今東西、クラシックからロックやポップス・童謡まで、翻訳者目線で見て「こんな訳はオレには絶対思い浮かばないよ…」と、脱帽して嫉妬してしまうほど秀逸な訳詞(歌詞の翻訳)を紹介します。
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☆『イパネマの娘』
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【コメント】
(9)『私の青空』に続いて、
もうひとつ堀内敬三さんの訳詞をご紹介。
オペラ「カルメン」より『ハバネラ』です。
L’amour est un oiseau rebelle
恋は野の鳥
という歌詞で始まることから、
日本語では「恋は野の鳥」という
タイトルで呼ばれることもあります。
原詞のフランス語の直訳は、
─────────────────────────
脅したって → こわもて
─────────────────────────
すがったって → 手管
口がうまくて
─────────────────────────
無口 → 恋知らぬ人
─────────────────────────
いやぁ、これは鮮やかっ!
見事に訳語を当てています!
そして、締めの言葉は、
「恋鳥」という造語を使っています。
今回の一節だけでも、高度な翻訳技術が
ふんだんに駆使されています♪
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原曲は、Gene Austin『My Blue Heaven』
堀内敬三さんの日本語訳です。
英語タイトルの「my blue heaven」は、
直訳すると
私の青い天国
ですね。邦訳では『私の青空』です。
詞を読んでいただけばわかりますが、
この heaven は「空」のことではなく、
「幸せな家庭」を表しています。
堀内敬三さんの訳詞は
原詞に忠実には訳されておらず、
むしろ超訳と言えます。
けれども、
原詞に描かれている
愛のある微笑ましい家庭
の雰囲気を凝縮すると、
狭いながらも 楽しい我が家
という訳は、まさに名訳中の名訳!
「天国」という語の使用を避けたり
「狭いながらも」と、ちょっと謙遜したり
しているところなんかは、
いかにも日本人らしい訳詞だなぁ
と僕は感じます♪
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【コメント】
マライア・キャリーのヒット曲『HERO』を
中山美穂さんが日本語カバー。
中山美穂さん自身が訳詞を担当したそうです。
詳しくは、Wikipedia HERO (中山美穂の曲) で。
なによりもまず、
世界の歌姫のオファーを受けて立った
日本のトップアイドルの気概がすごい!
と思いませんか?
原詞を直訳すると、
あなたが一人で世界に立ち向かうとき
それは長い道。
あなたがつかまるための手を
誰も差し伸べてくれない
ミポリンは、これを
果てない 旅に疲れて
温もりのない 愛に気づいても
と訳しています。
長い道 → 旅に疲れて
手を差し伸べない → 温もりのない愛
という言葉の連想がとてもウマい!
「疲れて」や「温もり」など、
主人公の心に寄り添った素敵な訳です。
それにしても、
マライア・キャリーもミポリンも
キラッキラに輝いていてカワイイ~♪
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【コメント】
Barry McGuire『Eve Of Destruction』の
日本語訳詞・カバー曲です。
日本語のタイトルは『明日なき世界』。
(6) 『デイドリームビリーバー』 では、
and の訳語の秀逸さをご紹介しましたが、
今回は「but」の翻訳に注目!
高石ともやさんの訳詞では、but が
でもよう
と訳されています。
「でも」とか「でもさ」ぐらいまでなら
僕でも訳せるかもしれませんが、
でもよう
と訳すことで、グッと憂いが込められて、
この曲にぴったりの訳になっています。
このように、翻訳、特に訳詞では、
語尾の1文字を変えるだけでも
歌詞全体の雰囲気がガラッと変わる
ことがよくあります。
訳語「でもよう」のスゴさを感じて
頂ければうれしいです。
また、タイトルにもなっている
eve of destruction
という表現。
タイトルでは「明日なき世界」と訳されて
いますが、歌詞の中では
「世界が破滅の前夜」と訳されています。
タイトルにはタイトルらしい訳語
歌詞の中では、音楽に合った訳語
が当てられています。
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【コメント】
『デイドリームビリーバー』
説明するまでもないでしょう。
The Monkees『Daydream Believer』
のカバー曲です。
「ゼリー」こと忌野清志郎さんの訳詞が
なんせ素晴らしすぎて泣けます。
ぜひ全文の訳詞を鑑賞して頂きたい。
るんるん特許翻訳のコラム「and の訳語」
にも書きましたが、翻訳者の視点からすると、
「and」の訳がオソロシイ!
英語の「and」を
そんで
って訳せる?
僕にはムリだわぁ。思い浮かびもしない。
文責: 福原真吾
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