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歌詞かし翻訳ほん 別館

訳詞の名訳を集めました

かしほん別館では、古今東西、クラシックからロックやポップス・童謡まで、翻訳者目線で見て「こんな訳はオレには絶対思い浮かばないよ…」と、脱帽して嫉妬してしまうほど秀逸な訳詞(歌詞の翻訳)を紹介します。

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『イパネマの娘』

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『時計』
 訳詞: かもまさる

あなたとふたり 過ごすこの夜は
イーティック・タック 悲しみ
やるせない想い
【原詞】
Nomas nos queda esta noche
para vivir nuestro amor,
y tu tic tac me recuerda
mi irremediable dolor.

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原詞で聴く
El Reloj - Robert Cantoral
original
訳詞で聴く
時計 - 菅原洋一
japanese

【コメント】
原曲は、メキシコの歌手
Roberto Cantoral(ロベルト・カントラル)
『El Reloj』という曲です。

El Reloj は、スペイン語で「時計」の意味。

Reloj no marques las horas.
時計よ、時を刻まないでくれ
という歌詞で始まります。
恋人とずっと過ごしていたいから、
「時計よ止まれ!」
という想いを綴った曲です。

上記の原詞を直訳すると、

僕たちの愛を生きるために
僕たちには今夜だけしか残っていない
そしておまえのチックタックは僕に思い出させる
癒されることのない僕の痛みを

かもまさるさんの訳詞を見てみると、

私達のために 時計をとめて
いつまでも今宵が すぎないように
あなたとふたり 過ごすこの夜は
イーティック・タック 悲しみ
やるせない想い

なによりも気になるのは、

イーティック・タック
ではないでしょうか?
「ティック・タック」は時計の針が刻む音
としてわかりますけれど、
最初の「イー」ってなんなんだ??

というわけで、原詞をもう一度見てみると、
以下のような句があります。

y tu tic tac
y: そして
tu: おまえの(※時計に語りかけています)
tic tac: チックタックは

発音すると「イー・トゥ・ティック・タック」。
この部分の原詞の音を日本語の歌詞に
そのまま取り込んだわけですね~!

菅原洋一さんが歌う上掲の動画をお聴き頂くと
わかりますが、たしかに、
「イーティック・タック」の「イー」の部分に
なにか日本語をあてはめようと思っても難しい。
この短さにハマる言葉が思い浮かびません。。

なので、
「チィ~~~ック・タック」のように伸ばしめに
歌うという手もあったかもしれない。

でも!
歌ったときの音の響きを考えたら
「イーティック・タック」が断然イイ!!

正直言って、最初は
「イーティック・タック」って意味不明・・・
そんな訳詞ありかよー!
と思いましたけれど、
なんども聴いているうちに
イーティック・タック
がベストな訳語にも思えてきました。

イーティック・タック
ちょっと斬新で、素敵な訳です♪

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『サンタ・ルチア』
 訳詞: 小松清

空に白き 月の光
波を吹く そよ風よ
かなた島へ 友よ行かん
サンタルチア サンタルチア
【原詞】
Sul mare luccica l’astro d’argento.
Placida è l’onda, prospero è il vento.
Venite all’agile barchetta mia,
Santa Lucia! Santa Lucia!

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Santa Lucia - パヴァロッティ,ロマーノ
original
訳詞で聴く
サンタ・ルチア
japanese

【コメント】
『サンタ・ルチア』は、ナポリ民謡です。
サンタ・ルチアは、キリスト教の聖人の名前。
「シラクサのルチア」「聖ルチア」とも呼ばれます。
ナポリの船乗りたちの守護聖人だそうです。

上記の原詞の直訳は・・・

海の上に 銀の星が輝いている
波は穏やかで 風はそよいでいる
敏捷な私の小舟に みんなおいで
サンタルチア サンタルチア

小松清さんの訳詞のなかの
「波を吹く」
という言葉に僕は惹かれました。

そよ風が「さざ波を立てる」
風が「そよぐ」
といった表現はよく見かけますが、
「波を吹く」とはあまり言わないのでは
ないでしょうか?
「吹く」というのがちょっと擬人的な表現で、
僕のなかでは、ギリシャ神話に出てくる
風の神ゼピュロスなども想起され、
とても素敵な言葉遣いだなと思います。

Venite は「みんなおいで」の意味ですが、
「友よ行かん」
と訳しているのも良い雰囲気♪
誰をも「友」として受け入れるナポリの人々の
おおらかな気質を映し出していますね!

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『ダンシング・ヒーロー』
 訳詞: 篠原仁志

今夜だけでも シンデレラ・ボーイ
Do you wanna dance tonight
ロマンティックをさらって
Do you wanna hold me tight
【原詞】
I'm gonna eat you up, spit you out
And run you right into the ground
I'm gonna wind you up, turn you on
And burn all your bridges right down

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Eat You Up - Angie Gold
original
訳詞で聴く
ダンシング・ヒーロー - 荻野目洋子
japanese

【コメント】
荻野目洋子さんが歌った『ダンシング・ヒーロー』
原曲は、Angie Gold の『Eat You Up』です。

上記の原詞を直訳すると・・・

あんたを食い尽くしてやる、吐き出してやる
そしてあんたがダメになるまでコキ使ってやる
怒らせて ソノ気にさせて
そしてあんたの関係をぜんぶ壊してやるわ

うわぁ、こんな過激な歌詞だったんだ。。
この歌詞のまま日本語で歌ったら
教育上問題となりそうですね。

そこで!? 篠原仁志さんは
どう訳したかというと、

今夜だけでも シンデレラ・ボーイ
荻野目ちゃんが歌うにはぴったりの
絶妙なおとしどころです!

この原曲から「シンデレラ」を思い浮かべて
訳詞に持ち込むなんて、超絶センスとしか
言いようがない!

それにしても・・・
「シンデレラ」なら普通は「ガール」でしょ。
「シンデレラ・ボーイ」ってすごいなぁ。。

訳詞には、原文に忠実な翻訳もあれば、
原曲の雰囲気を元に日本語歌詞を創作する
いわゆる「超訳」まで、いろいろあります。
この歌詞は、「超訳」の名訳でしょう♪

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『緑のリボン』
 訳詞: 松本隆

緑のリボンをあなたの巻き毛に
金と緑が よく似合うよ
愛する女神の居場所を知らせる
僕も緑が好きになった
【原詞】
Nun schlinge in die Locken dein
Das grüne Band gefällig ein
Du hast ja's Grün so gern
Dann weiß ich, wo die Hoffnung grünt
Dann weiß ich, wo die Liebe thront
Dann hab' ich's Grün erst gern

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Mit dem grünen Lautenbande - Mitsuko Uchida
original
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緑のリボン - 美しき水車小屋の娘 第13曲
japanese

【コメント】
シューベルト「美しき水車小屋の娘」より
第13曲『緑のリボン』です。

原曲の題名は、
Mit dem grünen Lautenbande
『緑色のリュートリボンで』

楽器のリュートに付いていた飾りのリボン
あるいは、リュートに巻いたストラップ
のことかもしれません。

今回ご紹介する訳詞は、
個人的に思い出の深いものです。
もう20年近く前になりますが、
横浜・青葉台のフィリアホールで、
「美しき水車小屋の娘」を
カウンターテナーの米良美一さんが
松本隆さんの訳詞で歌うという
コンサートを聴きに行きました。
米良美一さんは「もののけ姫」で有名ですね。
訳詞を手掛けた松本隆さんは、
聖子ちゃんの「赤いスイートピー」をはじめ
数々の素晴らしい作詞があります。

このコンサートは、
僕が訳詞というものを強く意識した
初めてのひとときでした。

さて、訳詞について。まずは
上で挙げた原詞の一節を直訳すると

いまや、君の巻き髪に巻き付いて
緑のリボンは良く似合っている
君は緑がとても好き
そして僕は、希望が芽生える場所を知る
そして僕は、愛が鎮座している場所を知る
だから僕も今は緑が好きだ

「die Hoffnung」: 希望
「grünt」: grün(緑色)の動詞形。

grünt は、「緑色を呈する」ですが、
転じて「芽生える」という意味もあり、
ここでは
「die Hoffnung grünt」: 希望が芽生える

ドイツ人にとって、
緑色「芽生え」のイメージなのですね!

「希望が芽生える場所を知る」
「愛が鎮座する場所を知る」の部分を
松本隆さんは、

愛する女神の居場所を知らせる
と訳しています。
「愛する女神」という、普通だったら
気恥ずかしくなってしまうような言葉を
さらっと歌に乗せてしまうところが、
松本隆さんの詞の魅力です♪

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『枯葉』
 訳詞: 大高ひさお

枯葉よ 泣くじゃない
色あせた 枯葉よ
【原詞】
Les feuilles mortes se ramassent à la pelle,
Tu vois, je n'a pas oublié...
Les feuilles mortes se ramassent à la pelle,
Les souvenirs et les regrets aussi

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原詞で聴く
Les Feuilles Mortes - Yves Montand
original
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枯葉 - 石原裕次郎
japanese

【コメント】
失恋のシャンソン『Les Feuilles mortes』。
フランス語の歌詞は、詩人
ジャック・プレヴェール(Jacques Prévert)
によるものです。

日本語の題名は『枯葉』となっています。
しかし、フランス語を直訳すると
『死んだ葉』となります。
「枯れた」ではなく「死んだ」と、
より詩的な表現になっています。

上に挙げた原詞の一節を直訳すると

枯葉がいっぱい積もっている
あなたは知っている 私が忘れていないことを・・・
枯葉がいっぱい積もっている
思い出と後悔と共に
とても切ない素敵な詩ですね。
そして、大高ひさおさんの訳詞は、
枯葉よ 泣くじゃない
色あせた 枯葉よ

直訳ではなく超訳なので
フランス語と日本語が直接対応している
というわけではないのですが、

枯葉よ 泣くじゃない
という訳はカッコよすぎ!
「枯葉よ」と、枯葉に呼びかけるなんて
僕には一生思い浮かばない。

これを石原裕次郎さんが歌うから
さらにカッコよすぎのよすぎ! です♪

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文責: 福原真吾
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