かしほん別館では、古今東西、クラシックからロックやポップス・童謡まで、翻訳者目線で見て「こんな訳はオレには絶対思い浮かばないよ…」と、脱帽して嫉妬してしまうほど秀逸な訳詞(歌詞の翻訳)を紹介します。
【ネイティブに教わる!シリーズ】 ←新コーナー!!
☆『イパネマの娘』
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【コメント】
ジブリ映画より「おもいでぽろぽろ」の
主題歌『愛は花、君はその種子』です。
歌ったのは、都はるみさん!
原曲は、女優であり歌手でもある
ベット・ミドラー(Bette Midler)が歌った
『The Rose』。同名映画の主題歌です。
今回ご紹介する高畑勲さんの訳詞は、
「翻訳の理想形」
と言っていいでしょう!
原詞の言葉を削らずにすべて拾い、
余計な日本語を付け足さず、
とても素直に訳されています。
それでいて、
原曲の持つ雰囲気を尊重しながらも
ご自身やジブリの世界観を醸し出す
というハイレベルな訳詞です。
原詞の直訳は
翻訳者目線では、
原語の言葉にピッタリ対応する
簡潔な日本語をよくもこんなに
うまく見つけられるなぁ
と感嘆してしまいます。
たとえば、
Some say ..., I say ... を
「・・・というけれど」
と逆説の一言でキレイにまとめたり、
endless aching を
「とめどない」
の1語でさらったり、
it's only seed を
「その種子」
というたった4音だけで
見事に曲を着地させたり。
簡単そうに見えるかもしれませんが
こういう訳が実は一番難しいのです!
何度でも言わせていただきたい。
高畑勲さんのこの訳詞は
「翻訳の理想形」
です!!!
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【コメント】
プッチーニのオペラ「トスカ」より
アリア『Vissi d'Arte』です。
日本語タイトルは『歌に生き、恋に生き』
「トスカといえばマリア・カラス!」という
オペラファンの方もいらっしゃるでしょう。
もうひとつ、皆さんにぜひ視聴して頂きたい
のがこちらの映像。
TV番組「題名のない音楽会」で、
美空ひばりさんが『歌に生き、恋に生き』
を歌っています。
美空ひばりさんの声法は
オペラ歌手とは全く異なりますが、
これもまた感動的です♪
マリア・カラスさんも美空ひばりさんも
「歌に生きた」女性ですね!
さて、原詞を直訳すると、
訳詞では、冒頭の部分が
今回の訳詞のように、
ふだん使わないような日本語表現が、
歌声に乗って心の琴線に響くこともあります。
正しくわかりやすい日本語であることと、
人の心に訴えかける日本語であることは
必ずしも一致しませんね。
残念ながら、今回の訳詞者は不明です。
ご存じの方がいらっしゃいましたら
ぜひ情報提供をお願い致します!
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【コメント】
ディズニー映画「ノートルダムの鐘」より
『僕の願い』です。
英語での曲名は『Over there』。
映画の原題は、
先日(2019年4月15日)の
ノートルダム大聖堂の火災の後に
この映画を見ると、いままでとは
違った見かたになってしまいますね。。
さて、この曲の歌詞の翻訳ですが、
これはとてつもなく難しい。
今までご紹介した訳詞の中でも
最も難易度が高いと思います。
浅利慶太さんの訳詞は
本当に本当に素晴らしいです!!
原詞は、
全体が語り口調になっており
主人公がつぶやきながら歌っています。
これを訳すには、
ただの歌詞の翻訳というよりは
散文詩の翻訳に近いです。
あるいは、
日記を翻訳して、曲をつけて歌う
ことを想像してみるとよいかもしれません。
難しさがお分かり頂けるでしょうか?
劇団四季でミュージカルや演劇に
人生を捧げて生きた浅利慶太さん
だからこそ訳せた名訳です!
ぜひ、訳詞の全文を読んで、
そして曲を聴いてみてください♪
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【コメント】
「歌う道化師」と称された シャルル・トレネ の
優しい名曲シャンソン『L' Ame Des Poètes』。
日本語タイトルは『詩人の魂』です。
上記の原詞の直訳は、
ビショップ節子さんの訳詞の歌いだし
曲の世界感にスッと入っていける
素敵な言葉使いですね。
また、ビショップ節子さんの訳詞は
漢字とかなのバランスがとても美しい!
文字を眺めているだけでも
穏やかに癒される歌詞です。
さらに、訳詞の最後の部分にも注目です。
この「ル」の音で終わるかんじが
シャンソンらしさをグッと引き立てています♪
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【コメント】
チャーチャラッチャ チャチャララ
チャーチャラッチャッチャッ♪
タイの国民的人気歌手である
トンチャイ・メーキンタイさんの
『เรามา Sing』(row mah Sing)。
Berryz工房さんが日本語でカバーして、
『cha cha SING』というタイトルで
リリースしました。
原詞を見ると・・・
google翻訳 や Weblio辞書 を使って
根性で調べてみたところ・・・
ลีลา | 美しい姿で歩く |
สุด | 最高の |
เธอ | 君 |
โชว์ออกมา | みせる |
อก | 胸 |
ส่าย | 振る,揺れる |
แล้ว | それで |
ร้องเพลงดังๆ | 大声で歌う |
おおまかな訳は、おそらく
さて、これを日本語詞にしたのは、
みなさんご存じのつんくさんです。
つんくさんは、上記の歌って踊る姿を
つんくさんらしい
突き抜けた究極の軽さの言葉選び!
ですね♪
訳詞の翻訳に限りませんが、翻訳の際、
原語に忠実に訳そうと意識しすぎると、
つい元の外国語に引っ張られて
ぎこちなく堅苦しい重たい日本語
になってしまうことがよくあります。
つんくさんの表現力の特徴の1つである
「軽快な日本語」
を研究してみるのもよいかもしれませんね。
文責: 福原真吾
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