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歌詞かし翻訳ほん 別館

訳詞の名訳を集めました

かしほん別館では、古今東西、クラシックからロックやポップス・童謡まで、翻訳者目線で見て「こんな訳はオレには絶対思い浮かばないよ…」と、脱帽して嫉妬してしまうほど秀逸な訳詞(歌詞の翻訳)を紹介します。

【ネイティブに教わる!シリーズ】 ←新コーナー!!
『イパネマの娘』

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『ママがサンタにキッスした』
 訳詞: 漣健児

でもそのサンタはパパ
【原詞】
I saw mommy kissing Santa Claus
Underneath the mistletoe last night

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I saw Mommy kissing Santa Claus - The Jackson 5
original
訳詞で聴く
ママがサンタにキッスした
original

【コメント】2019/11/29
僕の住んでいるドイツ・ハイデルベルクでは、
今週からクリスマスマーケットが始まりました。

ちょっと気が早いですが、
今回はクリスマスソングです!

『I saw mommy kissing Santa Claus』

誰もが知っている曲ですね♪
原曲の歌詞は、とても可愛らしいストーリー。

クリスマスにママがサンタにキスしてるのを
ボクはこっそり見ちゃった・・・

上に挙げた原詞を訳すと、

ボクは、ママがサンタにキスをしているのを見た
きのうの夜、ヤドリギの下で

mistletoe

英語 mistletoe は、「ヤドリギ」のことです。
西洋では、ヤドリギは、魔除けや不死など
神秘的な力がある植物とされています。
そして、

恋人同士がヤドリギの下でキスをすると
永遠に結ばれる☆
という言い伝えもあります!
ロマンチックですね~♪

この曲を日本語に訳したのは
天才訳詞家・漣健児(さざなみ けんじ)さん。
『ヴァケーション』でもご紹介しました。

漣健児さんの訳詞を見ると・・・

ママは寄り添いながら やさしくキッスして
とてもうれしそうに お話してる
でもそのサンタはパパ

最後の部分、英語の原詞では

I'm gonna tell my dad
パパに知らせよう/パパに言いつけちゃおう
となっているのですが、
でもそのサンタはパパ
って訳(というか日本語)は斬新すぎっ!

「サンタはパパ」って子供にバレちゃった!?
それとも、この最後の部分は、
パパとママの和やかな心の声なの?

最後に一瞬、「えっ!? どういうこと??」
と思わせたままおしまいという。。

訳として正しいとかどうこうではなく、
聴く人の気を引き寄せる魅力的な言葉遣い。
漣健児さんらしい唯一無二の翻訳です☆

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『フニクリ・フニクラ』
 訳詞: 青木爽/清野協

そこは地獄の釜の中
のぞこう のぞこう
【原詞】
Addó lu fuoco coce, ma se fuje
te lassa sta! Te lassa sta!
E nun te corre appriesso, nun te struje
sulo a guardà, sulo a guardà.

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Funiculì, funiculà - Luigi Denza
original
訳詞で聴く
フニクリ・フニクラ
original

【コメント】
『フニクリ・フニクラ』
みなさんごぞんじの曲でしょう。

原曲は、1880年にナポリのヴェスヴィオ山に
登山鉄道ができたときに、その宣伝のために
作られたコマーシャルソングだそうです。
日本のCMでも、替え歌を含めて、
たくさん使用されていますね。

私の脳内では何度原曲を聴いても

オニのパンツは いいパンツ~♪
という歌詞が流れています。

原曲の歌詞はナポリ語です。
ナポリ語は、ナポリ地方独特の方言で
イタリア人でも理解できないそうです。
上に挙げた原詞の一部は、
日本語に訳すと以下のようになります。

火が燃えている場所だけど、君が逃げたら
逃がしてくれる 逃がしてくれる
君の後を追わないし、君を苦しめない
見ているだけなら 見ているだけなら

ナポリ語の辞書や詳細な情報は
ネット上にもあまりなく、細かいところまで
正確に訳せているのかわかりませんが、
雰囲気はこんなかんじ。

火山の登山鉄道を説明しながら
「追う・逃げる」という男女の恋愛話にも
からめているところがいかにもイタリア

青木爽さんと清野協さんの共訳では、

そこは地獄の釜の中
のぞこう のぞこう

曲にマッチしたこの軽快さ!
見事としか言いようがありません。

「火山」→「地獄の釜」
「見る」→「のぞく」
という言葉の変換で、
ワクワクドキドキ感が10倍アップしています。

助詞「の」が、テンポの良いリズム
生み出しているところも見逃せません。

地獄中 ぞこう

名曲をさらに引き立てる名訳ですね♪

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『夜のタンゴ』
 訳詞: 門田ゆたか

小夜更けて 懐かしのタンゴ
遠く響けば 胸は躍る
【原詞】
Ich hab an dich gedacht
Als der Tango Notturno
Zwischen abend und morgen
Aus der Ferne erklang

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Tango notturno - Pola Negri
original
訳詞で聴く
夜のタンゴ - 因幡晃
original

【コメント】
『Tango notturno』
ドイツ映画「夜のタンゴ」(1937年)の主題歌です。

題名の『Tango notturno』はイタリア語で
「夜のタンゴ」という意味ですが、
曲の歌詞はすべてドイツ語です。

上記のドイツ語原詞の直訳は、

私はあなたのことを想った。
「夜のタンゴ」が
夕方と朝の間に
遠くから鳴り響いたとき

門田ゆたかさんの訳詞を見ると・・・

小夜更けて 懐かしのタンゴ
遠く響けば 胸は躍る

いやぁ、素晴らしい!
「小夜更けて」
という歌い出しにシビレますね。
訳詞のなかでは、他にも
「とこしえ」「うたかた」など
古典調の言葉が使われており、
朗読するだけでも大変美しい日本語です。

ぜひ全文を読んでみてください。
訳詞全文

「小夜更けて」から始まる名句として
思い浮かぶのは、正岡子規の作。

小夜更けて 雛の鼓の聞えけり
ひな祭りの一句です。
夜中、みんなが寝静まったころ、
五人囃子が鼓を叩いて歌い出す姿を
想像すると微笑ましいですね♪

話を戻して、
『夜のタンゴ』の「小夜更けて」の部分。
ドイツ語では

Zwischen abend und morgen
夕方と朝の間に
直截的に「Nacht=夜」と言うのではなく
婉曲的な凝った表現。これも素敵ですね♪

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『ソレアード』
 訳詞: 山川啓介

子供は 新しい光をつれて来る
青空に虹をかけ 夜空に星を生む
【原詞】
A ray of hope flickers in the sky
A tiny star lights up way up high
All across the land, dawns a brand new morn
This comes to pass when a child is born

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Soleado (When a child is born) - Johnny Mathis
original
訳詞で聴く
ソレアード~子供たちが生まれるとき~ 高田康子
original

【コメント】
「ソレアード」(Soleado)とは、
スペイン語で「ひだまり」のことです。

もともとの原曲は、イタリアの
Daniel Sentacruz Ensemble による
セミ・インストルメンタル(楽器+ボーカル)で、
歌詞はありませんでした。

英語の詩を付けて ジョニー・マティス
歌ったのがヒットしました。
世界の平和を願う内容の歌詞で、
クリスマスの定番曲になっています。

今回ご紹介する山川啓介さんの訳詞は、
英語の歌詞からの翻訳です。
『ソレアード~子供たちが生まれるとき~』
という題名が付けられています。

日本では、このメロディーは、
『哀しみのソレアード』
というタイトルでも知られており、
今回ご紹介する歌詞以外にも
さまざまな歌詞で歌われています。

上で挙げた英語の原詞を直訳すると、

1本の希望の光が空にきらめく
1つの小さな星が天高く輝く
大地全体にわたって真新しい暁が訪れる
1人の子が生まれるときに、これは起こる。

英語の歌詞では「a child」となっています。
この不定冠詞「a」は、総称的に

子供というものは、どの子供もみな
というニュアンスです。
ですが、この歌詞を読むとやはり
「a child」はイエス・キリストを想起させますね。
クリスマスソングとして定着したのもうなずけます!

なお、上記の訳の「起こる」にあたる
英語表現 comes to pass は、
ヨハネの福音書のなかでも用いられています。

ヨハネの福音書14:29
And now I have told you before it comes to pass, that when it shall have come to pass ye may believe.
そして今、私は、それが起こる前にあなたたちに話しました。それが起こったときに、あなたたちが信じることができるように。

さて、歌に話を戻しまして、
山川啓介さんの訳詞を見てみましょう。

子供は 新しい光をつれて来る
青空に虹をかけ 夜空に星を生む

この訳詞の素晴らしいところは、
「子供」を主語にした点です。

子供が光をつれて来て、虹をかけ、星を生む

子供は奇跡を起こせる存在であるし、
生まれてくる子供はみんな奇跡なんだ
という想いが伝わってくる美しい訳詞ですね♪

***
参考サイト: 世界の民謡・童謡
「哀しみのソレアード SOLEADO」
わかりやすい解説付きの素敵なサイトです♪

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『へんな家!』
 訳詞: 木下忠司

そしてもっと 困るなぁ
お手洗いが ないもん
【原詞】
Ninguém podia fazer pipi
porque penico não tinha ali

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La Casa! - Vinicius de Moraes
original
訳詞で聴く
へんな家!
original

【コメント】
原曲は『La Casa』。ポルトガル語の曲です。
作詞をしたのは、 ヴィニシウス・ヂ・モライス

トム・ジョビンと共にボサノヴァを確立した
偉大なる詩人・音楽家です。
『イパネマの娘』 もぜひお読みください。

今回の『La Casa』は、おちゃめな曲で、
NHK「みんなのうた」でも紹介されました。
日本語のタイトルは『へんな家!』です。

日本語のタイトルどおり
へんな家の話を歌にしています。
どんなふうにへんなのか、
原詞を見てみると・・・

天井がなくて、なんにもない
誰も入れなかったんだ
だってその家には床がなかったから
誰もハンモックでは眠れなかったんだ
だってその家には壁がなかったから

そして最後に、今回注目の歌詞!

Ninguém podia fazer pipi
porque penico não tinha ali

誰もおしっこできなかったんだ
だってトイレがなかったから

木下忠司さんの訳詞をみると・・・

そしてもっと困るなぁ
お手洗いがないもん

原詞では「pipi=おしっこ」という
言葉が使われていますが
日本語には訳出されておらず、
お上品な訳詞に仕上がっています。

そしてもっと困るなぁ

という言葉は原詞にはないのですが、
この一言で、子どもの姿が目に浮かび
曲のかわいらしさが倍増していますね♪

ちなみに・・・
この曲ではポルトガル語ですが、
ドイツ語でも「おしっこ」のことを
Pipi と言います。
フランス語も pipi ですよね。

ヨーロッパ共通で「ピピ」なのかなぁ?

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文責: 福原真吾
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