かしほん別館では、古今東西、クラシックからロックやポップス・童謡まで、翻訳者目線で見て「こんな訳はオレには絶対思い浮かばないよ…」と、脱帽して嫉妬してしまうほど秀逸な訳詞(歌詞の翻訳)を紹介します。
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☆『イパネマの娘』
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【コメント】2019/11/29
僕の住んでいるドイツ・ハイデルベルクでは、
今週からクリスマスマーケットが始まりました。
ちょっと気が早いですが、
今回はクリスマスソングです!
『I saw mommy kissing Santa Claus』
誰もが知っている曲ですね♪
原曲の歌詞は、とても可愛らしいストーリー。
上に挙げた原詞を訳すと、
英語 mistletoe は、「ヤドリギ」のことです。
西洋では、ヤドリギは、魔除けや不死など
神秘的な力がある植物とされています。
そして、
この曲を日本語に訳したのは
天才訳詞家・漣健児(さざなみ けんじ)さん。
『ヴァケーション』でもご紹介しました。
漣健児さんの訳詞を見ると・・・
最後の部分、英語の原詞では
「サンタはパパ」って子供にバレちゃった!?
それとも、この最後の部分は、
パパとママの和やかな心の声なの?
最後に一瞬、「えっ!? どういうこと??」
と思わせたままおしまいという。。
訳として正しいとかどうこうではなく、
聴く人の気を引き寄せる魅力的な言葉遣い。
漣健児さんらしい唯一無二の翻訳です☆
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【コメント】
『フニクリ・フニクラ』
みなさんごぞんじの曲でしょう。
原曲は、1880年にナポリのヴェスヴィオ山に
登山鉄道ができたときに、その宣伝のために
作られたコマーシャルソングだそうです。
日本のCMでも、替え歌を含めて、
たくさん使用されていますね。
私の脳内では何度原曲を聴いても
原曲の歌詞はナポリ語です。
ナポリ語は、ナポリ地方独特の方言で
イタリア人でも理解できないそうです。
上に挙げた原詞の一部は、
日本語に訳すと以下のようになります。
ナポリ語の辞書や詳細な情報は
ネット上にもあまりなく、細かいところまで
正確に訳せているのかわかりませんが、
雰囲気はこんなかんじ。
火山の登山鉄道を説明しながら
「追う・逃げる」という男女の恋愛話にも
からめているところがいかにもイタリア!
青木爽さんと清野協さんの共訳では、
曲にマッチしたこの軽快さ!
見事としか言いようがありません。
助詞「の」が、テンポの良いリズムを
生み出しているところも見逃せません。
名曲をさらに引き立てる名訳ですね♪
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【コメント】
『Tango notturno』
ドイツ映画「夜のタンゴ」(1937年)の主題歌です。
題名の『Tango notturno』はイタリア語で
「夜のタンゴ」という意味ですが、
曲の歌詞はすべてドイツ語です。
上記のドイツ語原詞の直訳は、
門田ゆたかさんの訳詞を見ると・・・
いやぁ、素晴らしい!
「小夜更けて」
という歌い出しにシビレますね。
訳詞のなかでは、他にも
「とこしえ」「うたかた」など
古典調の言葉が使われており、
朗読するだけでも大変美しい日本語です。
ぜひ全文を読んでみてください。
→ 訳詞全文
「小夜更けて」から始まる名句として
思い浮かぶのは、正岡子規の作。
話を戻して、
『夜のタンゴ』の「小夜更けて」の部分。
ドイツ語では
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【コメント】
「ソレアード」(Soleado)とは、
スペイン語で「ひだまり」のことです。
もともとの原曲は、イタリアの
Daniel Sentacruz Ensemble による
セミ・インストルメンタル(楽器+ボーカル)で、
歌詞はありませんでした。
英語の詩を付けて ジョニー・マティス が
歌ったのがヒットしました。
世界の平和を願う内容の歌詞で、
クリスマスの定番曲になっています。
今回ご紹介する山川啓介さんの訳詞は、
英語の歌詞からの翻訳です。
『ソレアード~子供たちが生まれるとき~』
という題名が付けられています。
日本では、このメロディーは、
『哀しみのソレアード』
というタイトルでも知られており、
今回ご紹介する歌詞以外にも
さまざまな歌詞で歌われています。
上で挙げた英語の原詞を直訳すると、
英語の歌詞では「a child」となっています。
この不定冠詞「a」は、総称的に
なお、上記の訳の「起こる」にあたる
英語表現 comes to pass は、
ヨハネの福音書のなかでも用いられています。
ヨハネの福音書14:29
And now I have told you before it comes to pass, that when it shall have come to pass ye may believe.
そして今、私は、それが起こる前にあなたたちに話しました。それが起こったときに、あなたたちが信じることができるように。
さて、歌に話を戻しまして、
山川啓介さんの訳詞を見てみましょう。
この訳詞の素晴らしいところは、
「子供」を主語にした点です。
子供が光をつれて来て、虹をかけ、星を生む
***
参考サイト: 世界の民謡・童謡
「哀しみのソレアード SOLEADO」
わかりやすい解説付きの素敵なサイトです♪
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【コメント】
原曲は『La Casa』。ポルトガル語の曲です。
作詞をしたのは、
ヴィニシウス・ヂ・モライス。
トム・ジョビンと共にボサノヴァを確立した
偉大なる詩人・音楽家です。
→ 『イパネマの娘』 もぜひお読みください。
今回の『La Casa』は、おちゃめな曲で、
NHK「みんなのうた」でも紹介されました。
日本語のタイトルは『へんな家!』です。
日本語のタイトルどおり
へんな家の話を歌にしています。
どんなふうにへんなのか、
原詞を見てみると・・・
天井がなくて、なんにもない
誰も入れなかったんだ
だってその家には床がなかったから
誰もハンモックでは眠れなかったんだ
だってその家には壁がなかったから
そして最後に、今回注目の歌詞!
木下忠司さんの訳詞をみると・・・
原詞では「pipi=おしっこ」という
言葉が使われていますが
日本語には訳出されておらず、
お上品な訳詞に仕上がっています。
そしてもっと困るなぁ
という言葉は原詞にはないのですが、
この一言で、子どもの姿が目に浮かび
曲のかわいらしさが倍増していますね♪
ちなみに・・・
この曲ではポルトガル語ですが、
ドイツ語でも「おしっこ」のことを
Pipi と言います。
フランス語も pipi ですよね。
ヨーロッパ共通で「ピピ」なのかなぁ?
文責: 福原真吾
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