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【実施例】の訳しかた

【実施例】の翻訳で注意すべき2つのこと


明細書内の【実施例】の翻訳のしかたについてです。ポイントは、「能動態で訳す」と「時制は原文通り」の2点!

[目次]
1. 実施形態と実施例
2. Examples(実施例)の翻訳のしかた
3. 特許明細書作成の現場では

実施形態と実施例

特許明細書を読んでいると、【発明を実施するための形態】や【実施例】という項目名が出てきます。米国特許ではそれぞれ以下のような英語の見出しが対応します。
発明を実施するための形態 = Summary of the Invention
実施例 = Examples
では、【発明を実施するための形態】と【実施例】の違いは何でしょうか?まずは特許庁のHPを見てみましょう。
出願の手続
第二章 特許出願の手続
第三節 明細書の作成方法(PDF)
上の「明細書の作成方法」というPDFファイルを読むと、次のように記載されています(下線・色・太字は私が付けました)。
[備考]14 ホ
特許を受けようとする発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができるように、発明をどのように実施するかを示す発明の実施の形態を記載し、必要があるときは、これを具体的に示した実施例を記載する。
発明の実施の形態をさらに具体的に示したものが実施例」という説明ですが・・・、う~ん、なにをもって「具体的」なのか、線引きがわかりにくいですね。。
そこで、実際に出願されている特許明細書をながめてみると、【発明の実施の形態】と【実施例】は、たいていは以下のような区別で使われています。
【発明の実施の形態】
・発明をどのように実施するかを記載する。
・ほぼすべての特許明細書に設けられる見出し。

【実施例】
・発明者自身が行った実験の手順や結果を記載する。
・主に化学・バイオ・医薬分野の特許明細書に設けられる見出し。
特に大切なのは、以下の点。
【実施例】には、発明者自身が行った実験の手順や結果が記載されている。

Examples(実施例)の翻訳のしかた

上でも述べたように、日本語の特許明細書の【実施例】に対応する箇所は、米国特許明細書では Examples です。
Examples =【実施例】
発明者自身が行った実験の手順や結果が記載されている。
Examples を翻訳するときの注意点は、以下の2点です。
(1) 原文が受動態でも、訳文は能動態で訳す。
(2) 時制は原文のまま。過去形は過去形のまま訳す。
特に注意すべきは (1) のほうですね。特許翻訳では、原文が受動態なら受動態、能動態なら能動態に訳すというのが大原則なのですが、Examples の中だけは例外的に能動態で書きます。なぜかというと、上にも書いたように、Examples には「発明者自身で行った」実験のことが書かれています。したがって、「~された」と受動態で訳すよりも、「(私は)こんな実験をした」と能動態で書くほうが日本語として自然だからです。

以下は、029.変態シーン-受動態と能動態にも載せた例文。

米国特許第4362629号
EXAMPLE 1
A chemical copper plating waste solution of 1 liter prepared to contain 900 ppm copper, 3 g formalin and 25.0 g EDTA and to be pH 12.0 was poured in a breaker. Then copper powder of 1 g was added and was well stirred. Ultrasonic vibration of 50 kHz was applied to the waste solution at room temperature for 30 minutes using a commercially available ultrasonic vibrator.

【実施例1】
 900ppmの銅と、3gのホルマリンと、25.0gのEDTAとを含有し、pH12.0になるように調製した1リットルの化学的銅めっき廃液をブレーカに注ぎ込んだ。次いで、1gの銅粉末を添加しよく撹拌した。市販の超音波振動器を使用して、室温で30分間、50kHzの超音波振動を廃液に加えた
すべて (1) 能動態で訳してあり、かつ (2) 過去形は過去形のまま訳してあることを確認してください。

#available

特許明細書作成の現場では

実際に現場で特許明細書を書いている弁理士さんや技術者さんは、何に注意して【実施例】を書いているのでしょうか?例えば下記の記事で垣間見ることができます。
創英国際特許法律事務所さまの季刊誌
季刊創英ヴォイス vol.55 SOEI-VOICE
「薬化材分野の特許想」第13回 実施例 (PDF)
弁理士の先生がどんな点を気にしながら明細書を書いているのかを知ることは、翻訳者にとっても有益なことだと思います。特に、フリーランスの特許翻訳者さんなど特許事務所の現場の様子を知らない方は、上記の季刊誌や他の特許事務所さまの発行誌を読むことをお薦めします!


最後までお読みいただきありがとうございました!
ダンケシェーン!!

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