もしあなたが、世の中に今までなかった斬新なモノを思い付いたとしたら、他人に勝手にマネされたりパクられたりしたくないですよね。そこで、あなたのアイデアを権利として保護してくれるのが特許権です。特許権を持っていれば、そのアイデアの使用権を独り占めすることができます。もし他の誰かがあなたのアイデアをマネて商品を販売していたとしても、差し止めや損害賠償を請求することができます。
特許と似た制度として、もうひとつ、実用新案というものがあります。これも同様に、あなたのアイデアを権利として守ってくれる制度です。特許と実用新案は何が違うのか? ごく簡単にまとめると、以下の表のようになります。
特許 | 実用新案 | |
---|---|---|
アイデア | 「発明」と呼ぶ | 「考案」と呼ぶ |
対象 | モノ・製造法など | モノだけ |
登録 | 審査あり | 無審査 |
出願料 | 14,000円 | 14,000円 |
審査料 | 118,000円 | 42,000円 |
他者への警告 | 出願公開後に可 | 実用新案技術評価書 |
権利期間 | 20年 | 10年 |
上の表をながめると、実用新案は特許の簡略版ということがお分かりいただけるのではないかと思います。
特許の「発明」には、モノや装置だけでなく、製造方法や化学物質なども含まれますが、実用新案の「考案」は、モノだけが対象です。製造方法などは実用新案として登録することはできません。
また、実用新案は無審査で登録されます。形式さえ正しく守られていれば、自動的に実用新案登録されます。これだけ聞くと、「モノを思い付いたら実用新案登録するのが簡単でよい」と思ってしまいそうですね。でも、登録が簡単なぶんだけ、権利行使のしかたが少し難しくなります。どういうことかというと・・・
もし、あなたのライバルが、あなたの発明(特許)または考案(実用新案)を勝手にマネして商品を販売していたとします。特許の場合は、出願公開後であればライバルに「警告」を行うことができます(特許法第65条)。その後、特許として正式に登録されたら、補償金の支払いを請求をすることもできます。
一方、実用新案の場合、実用新案登録されているだけでは権利行使をすることができません。ライバルに警告をするためには、実用新案技術評価書というものを提示しなければなりません(実用新案法第29条の2)。実用新案技術評価書とは、その考案に有効性があり価値があることを示す特許庁の「お墨付き」です。お墨付きがないままライバルに警告をして、その後、あなたの実用新案が無効と判断されてしまった場合には、逆に相手方から損害賠償請求をされてしまう可能性があります。
日本の特許法・実用新案法の現状では、実用新案の意義があまり見出されていないようです。実際、2017年の出願件数を見ると・・・
圧倒的に特許出願のほうが多く、実用新案はあまり活用されていません。さらに、実用新案技術評価書の請求件数は、わずか295件とのことです。日本の実用新案制度については、下記の特許庁のページにわかりやすく書かれています。ぜひご参照ください。
米国には実用新案はありません!
日本の実用新案のことを英語では、utility model と呼びます。似たような言葉で utility patent という用語があります。これは、実用新案のことではなく、通常の特許のことです。紛らわしいですね。翻訳の際には注意しましょう。
なぜ単に patent ではなく、utility が前に付いているかというと、米国特許法では、patent(特許) をさらに分類して以下のように呼ぶことがあるんです。
なお、特許法関連の用語については下記サイトなども役立ちます!
ドイツには、日本と同様に実用新案があります。
Gebrauchsmuster と呼ばれます。Wikipedia によると・・・
この弟くんは、日本の実用新案よりもデキる少年のようです。つまり、ドイツの実用新案は、日本の実用新案よりも権利行使をしやすく、特許と連動させて活用することもできます。
ドイツの実用新案の活用法については、下記のサイトに弁理士先生の詳しい解説があります。興味がある方はぜひ読んでみてください。私も勉強させていただいております。貴重な情報をありがとうございます!
▼ドイツ語にご興味ある方はこちらもぜひ!!▼
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